SURFACE OXIDATION

表面酸化分野

表面酸化分野で示すMA-Tの限りない可能性

酸化制御のシステムとして、感染制御だけに留まらない幅広い活用方法があるMA-T。中でもMA-Tの表面酸化分野は、電子工業分野や創薬、ライフサイエンスなど、多岐にわたる産業で活用・応用されることが期待されています。MA-Tの表面酸化が示す可能性について紹介します。

MA-Tは光で活性化が最強になる

酸化制御の仕組みであるMA-Tにおいて、光で活性化を高めることで実現する分野が、表面酸化とエネルギーです。基本的な反応は同じであるが、対象となるのが、高分子の表面か化学反応全体かの違いです。この技術は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」に採択され、「安全な酸化剤による革新的な酸化反応活性化制御技術の創出」の研究課題名で酸化制御共創コンソーシアムを推進中です(2019~2023年度、領域統括は大阪大学大学院薬学研究科の井上豪教授)(図1)。

図1 酸化制御共創コンソーシアム(JST ホームページより)

高分子の表面に酸素官能基を導入

プラスチックやフィルム、繊維などの高分子材料は、私たちの身の回りで多種多様な応用がなされています。基本的にこれら材料の表面は安定しています。MA-Tにより、その表面に酸素官能基を導入することで改質できるため、従来の課題を解決したり、新しい機能を付加したりすることもできます。
例えば、撥水素材の表面だけ、親水化することができるため、電池用セパレーター(電池内部で正極と負極を隔離し、両極間でイオンの行き来ができる膜材料)の性能と耐久性を向上させることができます。

クライオ電子顕微鏡の黎明期

クライオ電子顕微鏡によりタンパク質などの立体構造が解析できるようになり、創薬やライフサイエンスの研究開発が加速化しています。2017年にノーベル化学賞が「溶液中の生体分子の構造を高い解像度で観察できるクライオ電子顕微鏡の発明」に与えられたことは記憶に新しい。しかしながら、試料作製は試行錯誤が避けられず、1ヶ月程度の期間が必要であった。この工程を、MA-Tの表面酸化が飛躍的に改善しました。
従来はグラフェン(炭素で構成された厚みが原子1個分のシート)をプラズマ処理により親水化していたが、MA-Tで処理することで酸素官能基を導入して、タンパク質などの試料を直接結合できるようにしました(図2)。試料作製は10分で完了し、大幅に効率が向上しました。それに加え、さまざまな向きにタンパク質が結合されるため、さまざまな方向からの撮影画像が収集できるようになり、構造の高精度化に繋がりました(図3)。
井上豪教授には、2020年12月に開催した当工業会設立記者発表会で、早々に研究成果を披露いただいたが、その後も構造解析の成功事例が増え、世界最高分解能での結果も次々に得られています。JSTが発行する「JST news」 2021年8月号では、「『夢の反応』で技術革新」の特集記事が掲載されました。今後、学術論文が公開され、大反響となることが予想されます。
この技術革新により、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が、どのように変異してどのような機能を有するのか解析することができます。これは、ワクチン開発や新薬開発、新規診断、予防法開発などに役立つ成果となりえます。感染制御分野とは違うアプローチで、新型コロナウイルスの脅威から人々を守りたい。

  • 図2 クライオ電子顕微鏡の試料作製比較
    (2010年の二酸化炭素換算量での数値:IPCC第5次評価報告書より作図)
  • 図3 GroELの構造解析比較